「目標ですか?オリンピックで金メダルを取りたいです ハイ」

 「幅跳びじゃないんだぞ、Mercedes!」
小学校の時の百メートル走でトップでゴール目前の私に向けられたクラスメイトからの野次。
今思えば野次を飛ばした彼の目は素晴らし観察力を持っていた。

 小学校の時私の唯一誇れる事は”足が速い”事だった。
今はどうなのか知らないが、私が小学生5年生までは、運動会で”学級対抗リレー”と言うものがあった。
運動会のお昼を挟んだ前半と後半の最後に行われる組対抗のリレーである。
男女6人ほど(人数は忘れてしまった)のクラスで早い生徒が選ばれ走るレース。
クラスメートの声援をいっぱい受けてクラスの代表として走るわけだ。
私は5年生まですべてのレースで走った。しかも一番走者だった。
クラスで一番早かった私は良く先生に「アンカーになりなさい」と言われた。
そこで私はいつも、スタートが好きなので最初に走らせて欲しい、と一番走者を譲らなかった。
しかし、そこには私のずるい考えがあったのだ。
(あの頃私は結構な海千山千だったのか!気づかなかった!)
その考えとは・・・たとえスタートでトップに出れなくても後の走者が挽回すれば良い。私はとにかく3位以内に入ればそれで良いんだ・・・・。

 私の学年には誰もが認める足が速い女子が3名いた。その中の1人が私。
そしてその3人は、決まって第一走者として走っていた。(違う年も有ったと思うが、記憶の中では常に私達は始めのカーブまで3人肩を並べて走っていた。
1度兄がカーブに差しかかる少し前の場所で写真を撮った事があった。
それは見事な写真で、手ぶれも無く3人に表情、走る姿が実にはっきりと写っていた。

 しかしもう1つ私がアンカーを避けたい理由があった。
私は実は足を上手く使う事が出来ていないと自分で知っていた。
そう野次を飛ばした彼の言葉の通り、私の走りはスプリンターの走りではなかった。

 低学年の頃はそんな事知らなかった。
ある学年の時、体育の先生が私に言った。
「Mercedes, 弾むのは飛ぶ前までしなくていいんだぞ」
私達は授業で走り高跳びをやっていた。
次々にバーを飛び越える数人の生徒が集められてより高いバーを跳ぶ、飛べなかったクラスメイトの前で。
(今では恐らく考えられない光景だろうな・・・)
私は最後の2人に残り、その時先生が私の走りについて上記の事を言った。

私は先生の言った意味が分からず、しかしその言葉を1分ほど 飛ぶ番を待つまで考えた。
そして助走を始めた私はビックリした、先生の言葉の意味が完璧に理解出来たから。
冒頭の野次「幅跳びじゃないんだぞ」が上手く私の走りを分析していた。
私の走りは 歩幅も大きいが 足で地面を蹴った後 体がムダに浮く。
丁度三段跳びの感じ。あそこまでは行かないにしても私は自分の体が確実に浮く感覚を
その時初めて自覚した。
そして思った。・・・・だから私はトップになれないんだ・・・・・と。

働き出してテニスブームで教室に通った時も指導の先生に言われた。
「どうじてピョンピョン飛んで走るの?」

 マラソンを始めたが長距離だし、タイムもほぼ1キロ6分前後だったので フォームを扱う必要などない。
ただ楽しんでレースに出ていた。しかもそれは楽しい時期だった。

 少し前まで私は走るのが苦手だった。もうスポーツを全くやめて10年以上経つ。
少し走ると動悸がする。電車に間に合うために走っても、いざホームに滑り込み、電車に間に合ったとしても、動悸がしている状態で電車に乗る勇気が無い。
しかし、今職場から出てバス停までの4,5分程度の道を良く走るようになった。
それは職場を出て通りを見ると、少し先にバスが見える時があるからだ。
私はやや昇り気味の歩道をバス停まで一気に走り、バスに乗る。
時々息が切れて怖い時もあるが、動悸なども起きないし、またそう言った一連の事を考えなくなっている。
バスが先にバス停について、私を待っていてくれる時などもあり、大声でお礼をドライバーに言って、ニタニタし「間に合った・・・・」と はぁはぁ言いながらも、それらを嬉しく思う。
そんな事が悪い思いを消し飛ばすのだろう。
人の心理とはそんなものなんだ。(いや、私の心理だけかも知れない)

 今週もいつもの朝6時半に家を出る私に、気温3度や4度は応えた。
今週のある朝、私は3分も家を出るのが遅れた、走らなければ絶対間に合わない。
今は多少走れる様になった私も寒さの中での走りは苦手。でも走らなければ。
私は「よし、走るぞ!」とつぶやいて走り始めた。
しかし私はふざけて、昨夜のニュースで見たホンダが開発している人型ロボット”アシモ”君の走りを真似た。
そして思わずつぶやいた。
「凄~い!」
アシモ君は計算されて設計されているロボット。昨年よりも早く走れる様になったのも
緻密な計算、設計の生み出したものだろう。
そしてその走りは 私の無駄なジャンピング・ランニングをアッと言う間に改善したのだ。
走って2分半程度はかかる距離を私は2分ほどで走った。しかも全く疲れを感じなかった。

 もちろん勘違いかも知れない。ただ体調が良く早く走れたのかも知れない。
しかしあのやや腰の引けた はっきり言って ”カッコ悪い” 走りは
見かけによらず無駄が無く効率的だった。

 私はあの日からアシモ君の走りをしている、走らなければいけない時は。
あーこの歳になってやっとランニング・フォームを改善出来たなんて、私ってラッキー!

[PR]
by mercedes88 | 2005-12-18 17:26 | 日記
<< どうぞお体に気をつけて ゴ~ン X 3 >>