彼女達の武器

 職場が変わった為、朝の満員電車に乗る事になった。
ニュースやCMで見た事がある、あのドアのガラスに顔がベチョっとくっ付く位のもの。
私は急行電車に乗り換える際、その状態の電車に乗り込み、5分程度で着く次の駅で降りる。
その為最後の乗客として電車に乗り込む作戦をとっている。
しかし、それもなかなか上手く行かない。そう考えているのは私1人ではないし
そこにはなんと、武器を持った美女達が無数にいたのだ。

 まず彼女達は自分の武器の威力を知らない。
私は最後の1人になる事をあきらめ、とりあえず電車に乗り込むと次から次にと彼女達が乗り込み。
そして容赦なく、私の腕や背中にその武器を押し付ける。

彼女達が肩から下げているブランド、トレンドのバッグの角が容赦なく私の体にブチ当たる
彼女達はその武器が武器と成している事を知らないので、決して、断固として、肩から下ろさない。

当然だ。それはショルダーバッグなのだから。

経済新聞を読むキャリアウーマンもいる。
この満員電車で、新聞を読むこの姿勢は上司に報告すべきだ。
彼女は新聞を上手に縦に4つに折りそれを半分にして読んでいる。
彼女の肩のかけられたブランドのバッグは勢い良く彼女の背中から後ろへ突き出ている。
時々彼女はバッグが邪魔なのか、自分の肘で上手くバッグを後ろへ押す、素早く。

私の無防備な腕にバッグの角が突き刺さる。

私は小さく「イッタ」と思わず言う。
彼女は振り向き私を見る、キリッとした眼差しで。
その途端、彼女の武器が、隣で目を閉じて音楽を聞きながらしばしこの世を離れていた若き何処ぞの王子の胸元に強烈に突き刺さり、哀れ若い王子は流れ出る己の赤い血を見て青くなり
その場に倒れこもうとするが、スペースが無いので、とりあえず胸を押さえて立っている。
彼女はそんな事はお構いなく、今日の、明日の経済を立て直すべく、新聞を読んでいる。

 そうしていると電車が揺れて私は捕まる所がなかったためよろめき、斜め後ろの乗客に体が当たった。鋭い痛みを横腹に感じる。斜め後ろの美女はトレンドのバッグを腕にかけている。その角が私の左のわき腹に突き刺さった。
彼女はせっかくきれいな姿勢で立っていたところを私に寄りかかられバランスを壊したことに腹を立てたらしく私を押し返してきた。
2度目のパンチ。しかも場所が同じなので、ダメージは大きい。
私は息を整えて近づく駅を待つ。

 ようやく駅到着、車両やや中央に押し込まれていた私は「すみません。降ります」を繰り返し下車する。
その際ドアまでの間に何度も、腕や胸、腹部に彼女達の武器が容赦なく突き刺さる。

ようやく電車から降りた私は走り行く電車を見送りながらつぶやく。

一体何故彼女達は、肩から、腕から、武器を下ろして手で持たないのだ。
一体何が彼女達に武器を担がせているのだ?
何故なんだ?!

誰かが言わなくちゃいけないのだろうか?

あのーきれいなお姉さん、その皮のバッグ、肩から下ろして手で持って電車に乗ってもらえませんか?
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by mercedes88 | 2006-11-09 07:46 | 日記
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