「良い人生を」の針

 ある人のエッセイを読んでいたら、愛する人と別れる際 
「Have a nice life」
と言っているシーンがあって、私はそこでしばらく涙を流した。
理由は私も同じ様な状況下で、その言葉を使ったから。
「Have a nice life」

 「良い人生をね」の思いを込めての言葉なのかも知れない。
しかし私がこの言葉を知ったのは映画「恋人達の季節」(だったかしら)メグ・ライアン&ビリー・クリスタルの出演映画。
大学を卒業したメグはNYまで車で行く相手を掲示板で見つけ、そしてNYを目指す。
いろんな出来事があり、メグはビリーの存在にうんざりし、NYで別れる際セイセイした思いでビリーに言う。

「Have a nice life」

そこには
”もう二度と会う事も無いわよね!私の前にもう二度と現れないでねぇーー”
という隠れた意味がある。
イヤ、それは隠れてもいない。その意味なのだ。

私が読んで涙を流したエッセイも、その言葉は同じ思いで使われている。
しかし著者はその後大きな後悔と孤独、罪悪感、嫌悪感に襲われる。
そして言葉を”投げつけた”相手を求め街をさまよう。

私は2度、この言葉を使った経験がある。
どちらもこの言葉のもつパワーを知って使った。
この言葉、映画で覚えたこの言葉の持つ”鋭い針"の存在を知って使った。
そして、使った後、後悔した。
残酷な事は、今この言語を使っている人達が、この言葉の針の存在を知っている事。
だから私がこの言葉を使った際、2度とも、言われた相手は一瞬たじろいだ。
威力はバズーカ砲のごとく相手の体に穴をあける。
そんな事、すべてを知っていて、私は使った。
そして一人になって、泣いた。

いつか、誰かが、私に、微笑みながら

「Have a nice life」

と言うだろう、きっと。
そんな気がする。
天に向かってつばを吐けばそれは真っ直ぐ自分の顔に落ちてくる。

人生に2度でも多すぎるこの言葉を、もう決して言いたくない。
出来れば、誰にでも、言われたくない。
しかし誰が保障してくれるだろう。
「誰も君には言わないよ」と。

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by mercedes88 | 2006-02-14 07:11 | 思い出
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