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あるThe New yorkerからの思い出

あれはロス五輪の年の、おそらく5月頃までの間にあった事だと思います。
(いつも無精で、不確かな事ばかり書いている・・・反省しています)

英語が読めませんが、実は以前時々アメリカの雑誌The New Yorkerを買っていました。
輸入ものですから値段も高い。でも表紙が好きだったりすると買って部屋に飾っていました。
中のイラストも愉快で楽しくて・・・小さな贅沢でした。
私の街の大きな本屋さんでも2冊程しか入荷がなく
表紙が気に入って買えた時はとてもうれしかった事を覚えています。

ある日、その本屋さんの洋書コーナーへ行くと
素敵な表紙のThe New Yorkerがありました。
オーケストラがステージで演奏を終えたところなのでしょう。
シンバル奏者に対して、指揮者、観客
さらに他のオケのメンバーが拍手をしている絵でした。
書かれている人物が皆、良い笑顔でした。
しかし私のお財布には雑誌を購入するに足りるお金は入っていませんでした。
取っておいてくれるかどうか、お店の人に尋ねたけれど、それは出来ない、との事でした。
そして翌日仕事帰りに本屋さんへ”買うぞ!”と出かけると、もうすでに売れていました。

良く覚えていないけれど、諦めの悪い私ですから
いろんな本屋さんへ電話を入れたと思います。
たとえばイエナ書店などに。
でも私の街に届く前にイエナなどの東京の書店に届くでしょうから
当然売れているわけです。
そうすると、余計に「あぁ、あの表紙、良かったのになぁ・・・・」となるわけです。

私の街にアメリカン・センターというところがあって、アメリカの雑誌を置いています。
入って読むことはできます。
もちろんずーと雑誌を残しておく事は不可能だと思った私は電話でお願いしました。
「捨てる時、頂けませんか?」と。
でも、それは出来ないと言われました。

でも、なんとか入手したい。NJのJudyに頼んで、探してもらう事も思いました。
でも、やはりまだ何か自分で出来ることはないか・・・と考えました。
もうこうなったら、表紙を写真に撮るとか、そんな事でも良い!

で、ふっと浮かんだのが、常盤新平さんでした。
まだ翻訳中心のお仕事の頃で、出版される本は全部読んでいました。
そこで私は凄い行動に出たのです。
常盤新平さんという人が、私の突っ走り行動を何だか許してくれ”そうな"気がしたので・・・。
(まぁ私だから、何でもやってしまう、という感じが本当のところですね)
最後に常盤さんの本が出版された出版社へ電話をかけて
常盤新平さんとコンタクトは取れないかと聞いたのです。
ーあの方なら解決出来る問題を抱えていまして・・・ーと。
すると、なんとその出版社は常盤さんの自宅の電話番号を教えたんですよ。
今じゃ考えられませんよね。
もちろんすぐかけました。奥様がお出になられて
「今、どこそこのホテルで缶詰になって書いているんです・・・番号お教えしますね」
えーっ、かけてもいいんでしょうか?とう感じで恐縮(?!)すると
「かまいませんよ」との事でした。

それですぐ電話をかけて直接、憧れの常盤新平さんとお話をしたわけです。
「常盤先生」とお呼びすると「先生なんてもんじゃないですよ」と笑って仰いました。
それで、ーこの表紙にのThe New Yorkerを探しているのです。
もしお持ちでしたら、一時御借りできないものか、写真を撮って必ずお返ししますからー
とお話したら
ー確かに覚えているけれど、おそらく処分したと思う。
たくさんの本や雑誌が送られてくるので、必要なものにだけ目を通し処分するので
数か月も前の、特に雑誌はないでしょうー
との事でした。

今に冷静に考えると、そう答えるのが当然かもしれませんよね。
電話まで掛けてくるどこの誰かもわからない人間とかかわりあいたくないでしょうから。
何でもやってしまう私も、ここでさすがに断念しました。
断念というよりも”満足”とか”ラッキー!”かもしれませんね。
それで常盤さんの電話番号を教えてくれた出版社へ
常盤新平さん宛でのお礼の手紙を出しました。

そしてしばらくし・・・・・・
私はローラーコースターに乗る為の旅に出かける日を迎えました。
ロス五輪が終わって数日後の事です。
出掛ける前に家のポストを見ると、小冊子郵便が届いていました。
青いインクの万年筆で私の名前と住所が書かれていて
裏には常盤新平さんのご住所とお名前が書かれていました。
家にも入らずその場で封筒を開けると
常盤さんが翻訳されたアーウィン・ショーの「夏服を着た女たち」の文庫本が入っていて
同封されていたメモに
「お役に立てなくて申し訳ありません」そして自分が翻訳して本、よければ読んでください、
と書かれていました。
私はその本を単行本でもっていましたが、その日送られて来た本をこれから行くアメリカへ
一緒に持っていくことにしました。

今は直木賞作家となられた常盤新平さん。
ー私が好きで、何度も歩いたNYは、いつも常盤新平さんが道案内だったー
その思いは、今も変わりません。

しかし、本当に私は、恐れを知らない人間だったなぁ・・・(今もだ!)


全く関係ない話だけれど
ロス五輪で背泳ぎのリック・ケアリーが(100mか200mか不明)仏頂顔で表彰台に乗り
テレビや新聞で彼のその行為と表情を知ったアメリカ国民から
凄いバッシングが来て,彼は数日後新聞に謝罪文を載せた事はしっかりと覚えているのに
何が不満だったのだろうか・・・金メダルは取っているんだけれどなぁ・・・。
イケメンと言うと、こんな事まで覚えているにも関わらず、肝心の理由を覚えていないなんて
実に私らしい事であります。
by mercedes88 | 2008-08-03 18:05 | 思い出
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